キーポイント
- 求人タイトルに「AI」を含む職種の種類数は、急増している。2022年上半期の78から、2026年上半期には305へと、4年間でおよそ4倍に拡大した。
- この広がりは、テック職種だけの現象ではない。2026年上半期にAIを掲げた職種のうち、約8割はソフトウェアやデータ以外の非テック職種だった。
- 新たにAIが「届いた」職種は、事務・営業・カスタマーサポート・警備・教育・介護・運送など多岐にわたる。数年前までAIとほぼ無縁だった職種のタイトルに、AIツールの活用が書き込まれ始めている。
2022年以降、日本の職場でもAIツールが導入され、雇用主はより幅広い職種においてAIを職務名に組み込むようになっています。この傾向は当初、ソフトウェアやデータ関連の職種に集中していましたが、現在では営業、人事、法務、カスタマーサポート、警備、事務など、他の多くの職種でもAIが職務名に登場しており、AI関連のスキル、業務、ツールが労働市場で主流になりつつあることを示しています。こうした動きは、米国や欧州で観察されている傾向と同様です。
本分析では、標準化された職種名、つまりIndeedの詳細な職業分類を用います。これは、非常に類似した求人情報を共通のラベルでまとめたものです。例えば、「AIエンジニア(自律エージェント)」「応用AIエンジニア」「AIエンジニア(急募)」といった求人はすべて「AIエンジニア」というラベルに分類され、このラベルは国や時期を超えて一貫して定義されています。ある期間において、そのラベルの求人のうち雇用主が書いた職種名に「AI」を含むものが一定数以上ある場合に、その標準化職種を「AI関連」と分類します。
AIはより幅広い職種に広がっている
求人タイトルにAIを含む職種の種類数は、2022年上半期の78から、2023年に99、2024年に100、2025年に161を経て、2026年上半期には305に達しました。4年間でおよそ4倍です。とりわけ直近1年はほぼ倍増と伸びが際立っており、職場での生成AIの活用が、いよいよ求人の「看板」であるタイトルにまで表れ始めた様子がうかがえます。

もしAIがエンジニアやデータサイエンティストだけのものであれば、AIをタイトルに含む職種はソフトウェア開発やIT関連に固まっているはずです。ところが、実際はそうなっていません。2026年上半期にAIを掲げた305職種のうち、約8割がテック以外の職種でした。非テックが多数を占める構図は2022年時点からのものですが、直近1年でその傾きがはっきりと強まりました。非テックの内訳を職種カテゴリ別にみると、機械工学(9%)が最も多く、経営(8%)、マーケティング(8%)、営業(5%)、事務(5%)、アート・エンターテインメント(4%)、メディア(4%)と続きます。特定の分野に集中するのではなく、幅広いカテゴリに分散しています。
米国や欧州でも似た動きが観察され、AIを掲げる職種はいまやテック職より非テック職で目立つようになっています。
AIは、これまで無縁だった職種にも登場し始めている
数年前にはAIとほとんど接点のなかった職種に注目してみます。2026年上半期にはAIを掲げていたものの、2023年の同じ時期には見当たらなかった職種、すなわちこの3年で新たにAIが登場した非テック職種を求人の多い順に並べると、次のような仕事があります。
- 事務・バックオフィス:「AIスキルが身に付く事務」「AIを活用した営業事務スタッフ」など、AIツールを使うことを前提にした事務の募集。
- 教育(塾講師・家庭教師):「AI教育システム個別指導の塾講師」「生成AI/プロンプト講師」「AI家庭教師」など、AI教材や学習システムを扱う教育の仕事。
- カスタマーサポート・コールセンター:「SNS企業のAI活用型コールセンタースタッフ」など、AIを組み込んだ顧客対応の仕事。
- 警備:「警備業、AIオペレーター」など、AI監視を運用する警備の仕事。
- 営業・販売:「配膳AIロボットの営業」「AI・Web提案営業」「AIを活用した販売」など、AIを売る営業もしくはAIを活用した営業の仕事。
- 建設・軽作業:「建設業界のAIオペレーション・ディレクター」「軽作業スタッフ(AIロボットの操作)」など、AI技術を取り入れた建築施工管理や軽作業。
- 運送・介護・看護:AIルート配送やAI配車で走るドライバー、AI導入で送迎を効率化した介護施設、AI記録で事務負担を減らす看護・訪問看護など、現場・対人サービスにも広がっている。

これらの職種に共通することは、AIを「つくる」のではなく、AIを「使う」という点です。雇用主はAIエンジニアを増やすだけでなく、これまでの職種にAIツールの活用を織り込み、それをタイトルで打ち出し始めています。同様の傾向は米国や欧州でも見られ、AIが、働き方そのものを静かに作り替えつつある証しといえます。
求職者の側にも同じ動きがみられます。IndeedにおけるAI関連の仕事検索はChatGPT登場以降およそ13倍に増え、AIを検索した求職者がクリックする求人に占める非テック職の割合は、2023年の33.8%から2026年には64.6%へと上昇し、テック職と逆転しました。AIを掲げる求人の広がりと、非テックのAIの仕事を探す求職者の関心の高まりは、互いに呼応し合っています。
雇用主・求職者にとっての意味
求人タイトルに「AI」という単語が含まれている場合、雇用主が業務内容や必要なスキルにおいてAIを重要な位置づけと考えている可能性が高いでしょう。また、応募者がそのような記述を雇用主の革新性などの好ましい特徴と結びつける場合、競争上のシグナルとなる可能性もあります。IndeedのAIトラッカー等のAI導入調査に基づく指標は、職場におけるAIツールの普及が拡大し続けていることを示唆しています。
そして、AIは「テック職の採用」から「あらゆる職種の業務」へと移りつつあります。 事務・営業・教育・警備・介護まで、AIツールの活用が求人タイトルに書き込まれ始めています。雇用主においては、自社の非テック職種において、AI活用をどう位置づけ、どう言葉にするかが問われ始めています。
求職者にとっては、AIリテラシーが職種を問わないスキルとして考えられつつあることを意味します。 「AIをつくる」専門職でなくとも、「AIを使う」ことが多くの仕事で前提になりつつあることを認識し、少しでもリテラシーをつけることは今後転職を進める上でも有意義となるでしょう。
方法
本稿では、2022年第1四半期から2026年第1四半期までのIndeedの求人情報を使用。
正規化された職種名は、特定の四半期において、そのラベルの付いた求人のうち少なくとも5件に、雇用主の職種名に「AI」、「GenAI」、または「人工知能」(あるいはこれらの用語の他言語での適切なバージョン)が含まれている場合に、「AI関連」と定義。
Indeedの標準化された職種名は、非常に類似した求人情報を、一貫して定義された単一の職業レベルにまとめることで、国や時期を超えて比較できるようにしている。これは、統計機関が使用する標準的な職業分類よりも詳細である。 例えば、日本標準職業分類(平成21年設定)は、最も詳細な小分類レベルで329に分かれているが、Indeedの日本データには、特定の半期(2026年上半期)に少なくとも5件の求人情報がある約3,700の標準化された職種名が含まれている。
なお、本稿で用いる職種カテゴリには「未分類」も含まれる。「未分類」とは、職種名が一般的すぎて特定の職種に分類できない仕事を指す。
一方で日本の求人には、「AIに代替されない」「AIには運べない」といった、AIを引き合いに出す“売り文句”も目立つ。これらは職務でのAI活用を示すものではないため分析からは除いているが、AIが仕事の語られ方そのものを変えつつあることを映している。